閉鎖する部署の派遣さん
閉鎖が決まったとき、うちの部署には、一人派遣さんが来ていた。
社風的に社員と派遣は分け隔てなくやっていて、私自身も時々彼女が派遣であることを忘れそうになってしまうこともあった。
いつだったか、彼女も入れて取引先と飲みに行ったこともある。業務上伝える必要も無かったので、派遣であることは特に先方には知らせなかった。先方は今でも彼女が社員だと思っていると思う。
その帰り道、彼女は「私、今日のこと派遣仲間には言えないです。社員とおいしいものを経費で食べさせてもらったなんて、恵まれすぎてます」なんて言っていた。
うーん、こうやって文字にするとますますホワイト企業に見えるなぁ。なくなっちゃったら意味ないけどね。
で、部署がなくなるお知らせはさすがに彼女のいないところで行われ、彼女はすぐ後にそれを知らされたそうだ。
偶然、彼女は妊娠による契約満了でその後まもなくうちを去ることになっていた。
多分他の社員たちは私が不在中にしこたまこの件については話してしまっただろうので、今更休暇明けの私が「大変ですよ!」と騒ぐのも妙な空気になっていた。それに個人的にそのときの様子も聞きたかったので、私は彼女に「聞いた?」と話を振ってみた。
「なんか申し訳ないです。私だけ逃げ出すみたいで」
と言われた。うん、あの瞬間から立場が逆転したよね。
彼女は一生懸命調べて、派遣社員でも育休を取れるよう段取りを取っていた。もともとお給料は少ないですけど、それでも足しにはしたいし、と言う彼女に「良かったね~」というその口で「就職は絶対正社員だね。それも福利厚生のいいところ。産休育休時短しっかり取れるところよね」と言っていた同僚も妊娠中だったけど、全部パーになったからね。
「あなたは何も気にすることないよー。ちゃんと準備してただけー」
私は心からそう言った。